中小企業向け賃上げ促進税制 導入のメリット・デメリット
2022/05/30
税理士法人CONFIANCEです。
令和4年度税制改正関連法では、従業員への配分に積極的な企業を後押しするため、賃上げ促進税制が抜本的に強化されました。
特に中小企業については、雇用者全体の給与総額を1.5%以上増加させた場合、給与増加額の15%の税額控除を行うと主に、人材投資等に積極的な企業に対しては税額控除率を上乗せし、最大で40%を税額控除できる制度となりました。
雇用の拡大や従業員の給与の増額を検討している企業にとっては、後押しとなる心強い制度です。
中小企業向け 賃上げ促進税制 の概要
中小企業向け賃上げ促進税制は、要件を満たした青色申告書を提出する中小企業者等が、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
対象となる企業は青色申告書を提出する企業で、以下に該当する場合です。
- 資本金の額または出資金の額が一億円以下の法人
- 資本金または出資を有さない法人のうち常時使用する従業員が1000人以下の法人
- 従業員が1000人以下の個人事業主
- 協同組合など
適用期間は令和4年4月1日~令和6年3月31日までの期間に開始する事業年度が対象となります。
要件は通常要件と上乗せ要件の2段階で構成されています。通常要件では15%、上乗せ要件で最大40%まで税制控除率を上げることができます。
▼通常要件
適用要件 | 雇用者給与等総支給額が前年度に比べて1.5%以上増加 |
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税額控除 | 控除対象となる雇用者給与等支給増加額の15%を法人税または所得税から控除 |
▼上乗せ要件(1)
適用要件 | 雇用者給与等総支給額が前年度に比べて2.5%以上増加 |
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税額控除 | 税額控除率を15%上乗せ |
▼上乗せ要件(2)
適用要件 | 教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加 |
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税額控除 | 税額控除率を10%上乗せ |
通常要件のみを満たした場合は増加額の15%の税額控除となり、通常要件+上乗せ要件(1)を満たした場合は30%、通常要件+上乗せ要件(1)+上乗せ要件(2)を満たした場合は40%の税額控除となります。
ただし税額控除額の上限が設けられており、法人税額または所得税額の20%までとなります。
賃上げ促進税制 導入のメリット
1)法人税控除による節税
税額控除は、算出した法人税額から直接差し引ける控除です。
従業員の給与を増額しても、税額控除の分だけ負担が軽減できますので、コストの急増を避けることができるでしょう。従業員全体の給与アップを目指している企業や、更なる雇用を考えている企業は、活用することで節税にもなります。
2)人材育成に活用できる
賃上げ促進税制には、教育訓練費の増額による税額控除率の上乗せがあります。教育訓練費とは、従業員のキャリア形成やスキルアップに支出する費用です。上乗せ要件を活用することで、従業員の専門知識や技術を高め、中長期的に有効な人材の育成や確保につなげることができます。
導入については慎重に検討を
税額控除額は法人税または所得税の20%までという上限があります。そもそも納める法人税額が少ない企業は、あまり恩恵を得られません。
賃上げ促進税制は従業員の給与やボーナスの増額が前提の制度です。さらに、一度増額した給与を減額することは一般的に難しいです。経営状況次第では、のちのち資金繰りが厳しくなる可能性もあります。
導入に関しては、中長期的な目線で慎重に検討することが重要です。
まとめ
賃上げ促進税制は青色申告事業者を対象にした制度です。
中小企業の場合、雇用者全体の給与総支給額の増加分の15%から最大で40%の税額乗除を受けることができます。
賃上げの負担軽減になるので、賃上げを検討している企業にはメリットになる制度です。
納める法人税が少ない企業や、資金繰りに不安のある企業には、税額控除より賃上げによるコストで経営が圧迫される恐れがあります。
導入には中長期的な視点を持って慎重な判断が必要です。
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