成人年齢引き下げに伴う贈与税・相続税の改正

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成人年齢引き下げに伴う贈与税・相続税の改正

成人年齢引き下げに伴う贈与税・相続税の改正

2022/07/05

税理士法人CONFIANCEです。
民法の改正により、2022年(令和4年)4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
成人年齢の引き下げにより、贈与税・相続税の規定における20歳を基準とする要件についても18歳に引き下げる改正が行われました。

改正の内容と、国税庁で紹介されている事例について紹介します。

贈与税や相続人等の年齢要件の改正

今回、年齢要件が改正されたのは、贈与税では「相続時精算課税」「住宅取得等資金の非課税等」「贈与税の特例税率」「相続時精算課税適用者の特例」「事業継承税制」「結婚・子育て資金の非課税」、相続税では「未成年者控除」です。

贈与税

贈与税の区分では、原則60歳以上の父母、または祖父母から20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる「相続時精算課税」をはじめ、「住宅取得等資金の非課税等」「贈与税の特例税率」「相続時精算課税適用者の特例」の年齢要件が、4月1日以降はその年の1月1日において「18歳以上」となりました。

「事業継承税制」の年齢要件は、4月1日以降、贈与の日において「18歳以上」、「結婚・子育て資金の非課税」は、4月1日以降、結婚・子育て資金管理契約締結の日において「18歳以上 50歳以下」となりました。

区分

  • 相続時精算課税(相続税法21の9)
  • 住宅取得等資金の非課税等(租税特別措置法70の2、70の3、震災特例法38の2)
  • 贈与税の特例税率(租税特別措置法70の2の5)
  • 相続時精算課税適用者の特例(租税特別措置法70の2の6~70の2の8)

受贈者や相続人等の年齢要件

令和4年3月31日以前の 贈与・相続の場合
令和4年4月1日以降の 贈与・相続の場合
その年の1月1日において20歳以上
その年の1月1日において18歳以上

区分

  • 事業承継税制(租税特別措置法70の6 の8、70の7、70の7の5)

受贈者や相続人等の年齢要件

令和4年3月31日以前の 贈与・相続の場合
令和4年4月1日以降の 贈与・相続の場合
贈与の日において20歳以上
贈与の日において18歳以上

区分

  • 結婚・子育て資金の非課税(租税特別 措置法70の2の3)

受贈者や相続人等の年齢要件

令和4年3月31日以前の 贈与・相続の場合
令和4年4月1日以降の 贈与・相続の場合
結婚・子育て資金管理契約 締結の日において 
20歳以上50歳未満
結婚・子育て資金管理契約 締結の日において 
18歳以上50歳未満

相続税

相続税については「未成年者控除」が「相続の日において18歳未満」となりました。

区分

  • 未成年者控除(相続税法19の3)

受贈者や相続人等の年齢要件

令和4年3月31日以前の 贈与・相続の場合
令和4年4月1日以降の 贈与・相続の場合
相続等の日において20歳未満
相続等の日において18歳未満

贈与税・相続税の改正に係る事例

国税庁のパンフレットには質疑応答形式で、3つの事例が紹介されいています。

相続時精算課税について

Q1

質 問
私は、令和4年3月に父から現金500万円の贈与を受けました。同年10月に私は19歳になりますが、この贈与について相続時精算課税の適用を受けることができますか?

回 答
贈与の日は令和4年3月31日以前であるところ、あなたの年齢がその年の1月1日において18歳となるため相続時精算課税の適用を受けることができません。したがって、暦年課税により贈与税額を計算して申告することとなります。
※令和4年4月1にい以降に受けた贈与については相続時精算課税の適用を受けることができます。

Q1の質問者は税制改正が施行される令和4年4月1日より前にお父さんから贈与を受けています。そのため、改正前の年齢要件に従わなければなりません。
改正前の年齢要件は「その年の1月1日において20歳以上」であるため、贈与を受けた日に18歳であった質問者は該当しません。よって相続時精算課税の適用を受けることができません。暦年課税により贈与税額を計算して申告することとなります。

もし、贈与を受けた日が4月1日以降だった場合は改正後の年齢要件に従います。その場合「その年の1月1日において18歳以上」という年齢要件に当てはまるので、相続時精算課税の適用を受けることができます。

贈与税率について

Q2

質 問
私は、祖父から令和4年2月に現金800万円を、同年6月に現金700万円の贈与を受けました。同年9月に私は19歳になりますが、適用される贈与税率はどのようになりますか?

回 答
あなたの年齢はその年の1月1日において18歳となります。したがって、2月に受けた贈与については、一般税率の適用となりますが、6月に受けた贈与については、ほかの要件を満たせば、特例税率を適用することができます。

贈与税率の年齢要件は「贈与を受けた年の1月1日の年齢」で考えます。Q2の質問者は令和4年1月1日の時点で18歳です。

改正前である2月に贈与を受けた現金800万円は、改正前の年齢要件「その年の1月1日において20歳以上」に従うことになります。18歳である質問者は特例税率を適用することはできないので、一般税率で計算することになります。

改正後である6月に贈与を受けた700万円は、改正後の年齢要件「その年の1月1日において18歳以上」に従うことになります。こちらは要件に適合します。

ただし、特例税率を適合するには「直系尊属から財産の贈与」という要件があります。
直系尊属とは、父母・父方の祖父母・母方の祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。また、養父母も含まれます。叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。

Q2の質問者の場合、祖父ということですので直系尊属に該当しますので、特例税率が適用されますね。

 

一般税率と特例税率の両方の適用がある場合の計算方法については、国税庁のホームページに詳しく記載されています。そちらをご参照ください。

※国税庁ホームページが開きます。

事業継承税制について

Q3

質 問
私(19歳)は、令和4年中に、祖母から非上場株式の贈与を受け、事業継承税制(租税特別借置法70の7の5)の適用を受けようと考えていますが、適用を受けることはできますか?

回 答
贈与の日が令和4年3月31日以前の場合はこの制度を受けることはできませんが、贈与の日が令和4年4月1日以降の場合で、他の要件を満たすときは適用を受けることができます。

「事業継承税制」の改正前の年齢要件は「贈与の日において20歳以上」、改正後の年齢要件は「贈与の日において18歳以上」です。

19歳であるQ3の質問者は、祖母から非上場株式の贈与を、令和4年4月1日以降に受けた場合は年齢要件に当てはまります。

3月31日以前に贈与を受けた場合は、改正前の年齢要件に従わなければならないため、適用を受けることができません。

また「事業継承税制」については他にも幾つか要件があるのでそちらも当てはまる場合は、適用を受けることができます。

まとめ

令和4年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。それに伴ない、贈与税・相続税の20歳を基準とする要件も18歳に引き下げる改正が行われました。

 

贈与・相続等の時期によって受贈者や相続人等の年齢要件もことなるので注意が必要です。

「相続時精算課税」「住宅取得等資金の非課税等」「贈与税の特例税率」「相続時精算課税適用者の特例」については「その年の1月1日において18歳以上」となりました。
「事業継承税制」は「贈与の日において18歳以上」、「結婚・子育て資金の非課税」は「資金管理契約締結の日において18歳以上50歳未満」となりました。
また相続税につきましては「未成年者控除」が「相続等の日において18歳未満」に改正されました。

 

贈与や相続の際に、成人年齢引き下げによる税制改正の活用をお考えの方や、不安がある方はぜひ当事務所にご相談ください。

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